ヲカベ自分騙り

日々膨らむ妄言の具現化。

初めて行ったぼくりりのライブが「葬式」だった話。

 
 
 
 
 
 
 
「僕、"天才"を辞めようかなと思って」
 
 
 
 
弱冠17歳でデビューを果たし
センセーショナルな衝撃を業界に与え、
そのマルチな才能を遺憾無く発揮し
若い女性を中心に人気を博した
ぼくのりりっくのぼうよみ、通称「ぼくりり」。
 
 
人気絶頂の中、
突然の引退宣言をしたことを受けて
SNS上では悲嘆の声とにわかの炎上。
 
 
「本当に辞めるのか?」
「別名義で再開はあるのか?」
「アーティストとしての責任はないのか?」
「あぁんもう抱いて」
沢山の憶測の声が上がるのを
なんとなく遠巻きに見ていた自分。
 
 
そういえば、名前はよく見るものの。
ちゃんと楽曲聴いたことないな。、
 
と思うやいなや
足はTSUTAYAに向かう訳だが、
ひとつ借りたアルバムは取り込んだまま
あんまり聞いていなかった。。
 
独特の世界観、文学的な歌詞、
現役大学生シンガー、などなど
ロキノン系大好きオジサンとしては
どうしても耳が遠のく要素の羅列。
このまま彼を知らずして終わるのか。。
 
 
と、思っていた最中。
 
 
舞い込んだライブの誘いは
1/31を引退のリミットに設定したぼくりりの
最後のライブになるであろう
              「葬式」
 
 
、、、最初で最後のライブが、葬式。。
怖いもの見たさなのかもしれないけど
これって、なんか凄いモノを見ちゃうんじゃ?
純粋な音楽的好奇心に浮かされたヲカベは
これに行くことを決意。
 
 
 
ぼくりりが最後にファンに見せたものとは?
そのステージで表現したかった事とは?
 
 
会場で1番ぼくりりを知らなかったであろう
にわか満開のアホヅラの感想は↓から始まります。
ネタバレします、ご了承ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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まず初めに断っておくのは、
既に述べている通りですが
ぼくりりの事をほぼ知らないで
ライブに臨んでいます。
 
熱心なファンの方には
何を生意気にと思われるかもしれませんし
それは違うから!という感想もあるでしょう。
 
 
 
一応、最低限の礼儀として
4枚のアルバムとベスト盤「人間」を
一通り脳に流し込んで馳せ参じました。
「在り処」「sub/objective」「罠」カッケェ
この辺りがライブで聴けたら嬉しいな、
などと脳裏に横切るなかでの到着、三軒茶屋
 
 
三茶ですよ、三茶。
なんかオシャレですよね、三茶。
 
「明日どこ行く?」
「んー、三茶?」
ってめっちゃオシャレじゃないですか?
 
「んー、ローマ?」の次にオシャレ。
 
 
 
そして今回誘ってくれた同行者は
我が彼女ッジョ・ジョースター 略してジョジョ
ぼくりり歴ウン十年を誇る
国内屈指のぼくりり有識者であります。
 
 
 
 
 
 
そんなこんなで降り立った三軒茶屋駅から
徒歩でおよそ10分。
 
だ、大学の講堂とは。。
 
 
 
 
 
しかし講堂とは名ばかりで
入ってみるとしっかりしたホールになっている。
調べてみると、吹奏楽やオケの演奏会など
クラシック音楽の演奏の場として
頻繁に使われている様子だが、時折に
アーティストやアイドルのライブにも
活用されている等、そこそこ駅近でありがたい。
 
 
ちなみに、有識者であるジョジョによると
「最後のライブ会場に女子大を選ぶあたりに
ぼくりりの性癖が出ている。本当にえっち。」
 
なるほど、、、
確かに合法で女子大の、な、中に、、、
 
中に入れるぞ!!!!
 
という訳だ、役得。
 
 
さて、会場に入ると
既に会場限定ガチャガチャは売り切れ、
グッズも無いものがちらほら。
 
席はコンサートホールですから
もちろん指定席。
我々の席はやや上手寄りで半分より後ろ、
PA卓やスタッフブースの真横あたり。
お世辞にも神席とは言えませんが、
そもそも巨大なキャパでもないため
この位置でもステージはしっかり見えます。
 
ステージセットはなかなか壮大で、
中央には協会を思わせる巨大な十字架、
そして神殿のような柱が左右に立たっています。
柱に沿って燭台が並ぶなど雰囲気満載。
撮影禁止のためここに載せることは出来ませんが
Twitterで調べていただければ
多分見て頂くことが出来るんじゃないかな(皮肉)。
待ってる間、葬式を思わせる
荘厳なマイナー調のBGMが気分を盛り上げ
、、、いや、盛り下げます。
 
 
 
 
開場から待つこと30分
流石のソールドアウト、
席はパンパンに埋まりました。
 
 
 
暗転、
巨大な十字架がスーッと上に消え
背景のスクリーンに映像が。
 
 
 
机に向かい、
真剣な面持ちでノートに何かを
書き連ねていくぼくりりの姿が映し出され、
しばらく読んでいくとそれが
「遺書」である事に気付きます。
 
 
文面うろ覚えですが、
 
「拝啓    厳しい寒さが続きますが
皆様いかがお過ごしですか
私はもうすぐ死を迎えます
3年間という短い期間でしたが
ありがとうございました
皆様と共に歩んで来れて大変感謝しております。
私はお見苦しい姿をお見せしていましたが、
これから見せる2時間は私の人生そのものです
 
 
 
というような感じでしょうか。
 
 
 
走らせるボールペンの音だけが
会場に広がっている中で、
ついに、映像の終わりと共に
そのスクリーンの足元からぼくりりが!!
 
ちっちゃいイメージだったんですが
全然そんなことない!
むしろ結構シュッとしてました!
 
 
そして遺書の冒頭「拝啓〜」から
一曲目「遺書」に繋がっていきます。
 
 
まずビックリしたのが、
てっきりこんな会場なので
トラックを流してカラオケで歌うのかと
勝手に思い込んでいたのですが、
バッチバチのバックバンドが!!
 
 
センターで歌うぼくりりを挟んで、
上手にはキーボード、シンセとDJ、タッチパッド
下手にはギター、ベース、ドラムのロックセット。
 
え、、、バチバチやないですか、、、
 
原曲で打ち込みっぽいところも
みんな生演奏してくれてる、、、
クラッチとかメチャクソカッコエェ
 
 
 
この形態なら、歌はもちろんのこと
演奏も楽しめるじゃないですか!
って事でテンションは爆上がり。
 
 
 
続く二曲目は
コチラも現在飛ぶ鳥を落とす勢いのバンド、
King Gnu」のボーカル常田くんと共作の
あなたの手を握ってキスをした
トリッキーなメロディーラインに乗せて
愛する人を失った悲愴が歌われる。
 
 
続けて
sub/objective」「CITI」「Black Bird」と
ライブ定番のキラーチューンを熱烈に叩きつけ
圧倒されて座り込んでいたオーディエンスを
立つように煽る場面もあり
だんだんと立ち込める空気が濃縮されていきます
 
チラホラと泣いてるいる人の姿も。
主に、自分の隣。
 
 
その後、最新アルバムから数曲取り上げ
先日朝の番組出演時にも披露された
人間辞職」を繰り出します。
 
この曲はぼくりりの歌唱力を
まざまざと見せつけられる強いナンバー。
鋭いリリックから、サビに入ると
跳躍のあるフレーズ運びに美しいファルセット
そしてシャウトを混ぜる部分もあり
 
人間なんてオワコンなんだよ
人間を辞めることで人生を全うする
 
という「引退」する事で導き出された
今の気持ちを苛烈に歌い上げている。
 
 
 
新旧織り交ぜたセトリが続いていく中で
こと際立って印象に残ったのが
For the Babel」!
3ndアルバム「Fruits Decaying」の曲ですが
アルバム流し聞きしてる時は
あんまり思わなかったのに
こんなにカッコイイ曲があるなんて!!
と度肝を抜かれました。
 
疾走感のあるロック色の強いナンバーで、
何よりドラムがまぁーーカッコイイこと!!
このドラムの人、この曲大好きやろ。。
っていうのがビンビンに伝わってきて
メチャクチャノリにノったビート出してる!!!
決まりに決まったプレイで
グイグイ引っ張ってて気持ち良かった。。
後半のドラムソロで暴れすぎて
最後右手のスティックがぶっ飛んで暗転、
「えっ、大丈夫、、、?」と思ったけど
また演奏始まったらちゃんと持ってました笑
 
 
そこからは怒涛のフィナーレに向かって
ステージも進んでいきます。
 
 
超怖いMV、クセになる「輪廻転生」から
ストリングス隊がステージ IN。
サウンドはより厚みを増し、
アルバム「没落」の表題曲「没落」を含む
ラストアルバムの曲が次々に投下されていきます。
 
白く輝く証明、
恐ろしさと神々しさを孕んだ
壮大な楽曲「超克」の演奏が始まると
会場は総立ち、これが、これが彼の
最後のステージの最後の歌なんだと
誰もが直感しているような光景です。
 
ぼくりりは、最後まで熱量を落とさず
むしろ尻上がりに上がりきったそのエネルギーを
全て放出して、最後の1音まで歌いきり
それを表すかのように
銀テープならぬ白テープが
会場に打ち出され、空間を覆い尽くしました。
 
そして、満足そうに客席を見渡して
深々と礼を捧げて、
ステージを去っていきました。
 
 
スクリーンには、雨に打たれながら
視線を向けるぼくりりが最後に映り
次第に雨音が大きくなって大きくなって
ふと止んだその刹那、
 
 
 
 
耳をつん裂く雷鳴と瞬く稲光が迸り、
 
 
会場は、真っ暗闇に包まれたのです。
 
 
 
この世界から死ぬことが出来たのでしょう。
 
 
 
 
その後、会場の照明が灯るまで
誰も声を上げることも、身動きをとることも出来ず
立ち尽くしているという感じでしたが
最後に暖かい拍手が座席を満たして
この葬式は、全行程を終えたようです。
 
 
 
 
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この何もかも異例なライブを通して
自分が強く感じた事は
 
 
悪ふざけを突き詰めれば
芸術性を持つ
 
ということでしょう。
 
 
 
幾多のアーティストが
様々な理由でいつかは引退をするものですが
 
自主的な引退を
そのアーティストの「死」と位置付けて
ラストライブを「葬式」と呼称するなんて
未だかつて聞いた事がありません。
 
 
それは、やはり死や葬式というのは
安易に取り扱ってはいけない
とてもデリケートな事柄だからですし、
下手をすれば「不謹慎である」として
叩かれる対象にもなるでしょう。
 
 
さらに言えば、
ここまで大々的に銘打っておいて、
ちょっと悲しい雰囲気にはしました。。
なんて中途半端だったならば、
またもファンの反感を買ったことでしょう。
 
 
しかし!!
しかーーーぁし!!!
 
数え切れないほどの
細部までの拘りがとにかく凄い!!
 
分かっただけ紹介しますが、
 
 
まず、
チケット代ではなく、香典。
 
 
 
 
しかも金額もリアルで
チケット代としても丁度いい。
これはネットでも先んじて話題になりましたね。
 
 
 
 
 
出迎える入口の看板もこの通り。
 
遺影のような黒いリボン、
完売御礼という言葉の異形感がすごい。
 
 
 
 
 
 
もちろん葬式ですから、
清め塩も貰えます。(ちなみに使ってない)
 
注意事項的な紙も色々とありますが
今回のライブは演者ではなく「故人」。
 
「葬式をお楽しみください!」
とコレもとんでもないパワーワードです。
 
 
 
あと、写真はないんですけど
会場にいるスタッフさん達は
もちろん喪服めいた格好です。
黒スーツに黒ネクタイ、白ワイシャツ。
女性も黒白を基調とした服装。
 
そして当の故人のステージ衣装も
黒ワイシャツにジャケット、黒スキニー。
 
演奏のバックバンドの皆様も喪服。
ギターの人だけ腕まくりしてました。
 
さらにさらに、
これは偶然なのかもしれませんが
ギターは黒のサンバーストのボディ、
ベースも黒のボディ、
ドラムも黒いシェルのセット!
(ヘッドは多分白いです)
 
この辺もし楽器隊の方々
こだわって来てくれたのだとしたら、
スタッフのぼくりり愛が凄いです。
溢れすぎ。たまんねぇな。
 
 
そして、極めつけ!
これが1番びっくりした!!
 
 
 
 
タワレコの袋も白黒。
 
徹底してる、、、
いつもの目に訴えかけるカラーはどこへやら
とってもシックなお姿になられて。。
 
 
 
多方面からの協力姿勢、
とっても感動致しました。
 
他にも、
献花をすると遺影が貰えるというのもあって、
会場に入ると目の前に大々的に
献花台が置いてありました。
 
などなどetc...
 
 
 
 
結論:ここまできたら笑うしかない
 
 
嘘です。
いや、ヲカベは笑いました。失敬。
 
 
 
 
葬式の名を使う以上
徹底的に作り上げることで
生半可な覚悟で行うのではないというのを
まずはしっかり形で示したという事。
 
そこに少しのユーモアを加える事で
コンテンツとしての一連の流れを持った
壮大なアート作品として
ここに葬式、そしてぼくりりが完結した
という事なんじゃないかな、と思いました
 
 
ぼくりりの歌をもう聴くことができない
という寂しさの中で、なんだか
しっくり腑に落ちたなという気持ち。
 
 
それはもちろん、
最後に完全燃焼レベルで気持ちぶっ込みで
歌い上げてくれたというのもあると思います
 
ごちゃごちゃ言いましたが、
 
すげぇカッコいいライブだった
 
これが全てです。
 
 
 
 
 
 
 
ヲカベが抱いていた先入観、
思い描いていたぼくりり像は
実際は全然違うものでした。
 
そして、
沢山の人の中にある色んなぼくりり像も
やはりそれは正解のない偶像なのでしょう。
 
 
 
人と人が関われば、
お互い本質と違う取られ方をするのは
当然のことだと思います。
 
誰しもが黙認して生きている事を
許せないと、打破してやると、
率先して見せてくれたぼくりりの姿に
勇気を貰う人がこれから生まれると思うと
 
 
やはり葬式は意味のあるライブで
そしてそんなライブに行けたことが
何より誇らしく思うのです。
 
 
 
 
 
いつにも増して長くなってしまいました。
 
彼の今後の活躍をお祈りして。